一般

さよなら流星ガール

「どうして生き物は死ぬと思います?」 よく見ると、茉莉の大きな瞳は赤く滲んでいた。だけど茉莉の言葉は、いつもと同じく馬鹿みたいに丁寧で、どこか偉そうな口調だった。僕は鼻水をすすり上げ、 「神様は寂しがり屋だから」 と答えた。笑みを浮かべた茉莉…

虐殺器官

鳥のように自由に、なんていう人もいるが、それこそ鳥は、ほんとうに遺伝子に命令されてひとつしか選べない行動をとっているだけだ。 自由とは、選ぶことができるということだ。できることの可能性を捨てて、それを「わたし」の名のもとに選択するということ…

〔少女庭国〕

「お、おかしいじゃん、人殺してまでしたいことって普通ないじゃん。ないよね。私全然ないよ。人殺しても絶対やりたいこととか。やりたいことってないでしょ普通。やめようよこんなの。諦めちゃえばいいじゃん。普通に最後までだらだらしてようよ。馬鹿馬鹿…

少女キネマ 或は暴想王と屋根裏姫の物語

「停まりましょう」 「十倉さま?」 「はい」 「さちは、すでに姫でございます」 その台詞に、胸が震えた。 「それでは、お返事ができません」 「では」 僕の腹が、脳の判断力を超えてぐっと締まった。 あらすじ 十倉和成。中堅おぼっちゃん大学の1年生にし…

皇国の守護者(4) 壙穴の城塞

「なにをしている?急げ、戦争だ」 あらすじ 北領を制圧したユーリア殿下率いる帝国軍は龍口湾上陸を果たし、皇国本土への侵攻を開始する。 これに抗すべく皇国軍は、陸軍剣虎兵少佐・新城直衛を未完の要塞“六芒郭”の臨時防御司令に任命。 大地を覆う帝国東…

皇国の守護者(3) 灰になっても

畜生。新城は思った。自分が戦場にいるのは戦うためであって、忘れ難いものたちを得るためではけしてないのに。 「僕には理解できない」新城は言った。 「どうしていざとなると、誰も彼もが地獄へ望んで進撃したがるのだ?」 あらすじ 北領での武勲で少佐に…

皇国の守護者(2) 勝利なき名誉

背後から叫びが聞こえた。漆原だった。猪口ではなく、漆原だった。彼は命じていた。 「総員、大隊長殿を救えッ。突撃ッ」 莫迦野郎。どうしようもない大莫迦野郎。新城は思った。この僕を救え、だと。 畜生。あいつ、命令を守っている。自分に続けば、半数は…

僕が七不思議になったわけ

「でも、私は卒業して、大人になって、最後まで生きて、そうやって、最後に言うんだ。全然ダメでも、つらいことばっかでも、いい事なんてほんのちょっとでも、大切な友達がいた事とか、大好きな人が出来た事とか、本気で笑った事とか、尊敬するお姉ちゃんが…

博多豚骨ラーメンズ

「・・・・・・待ってろ、今すぐ殺しに行く」 あらすじ 福岡は一見平和な町だが、裏では犯罪が蔓延っている。 今や殺し屋業の激戦区で、殺し屋専門の殺し屋がいるという都市伝説まであった。 福岡市長のお抱え殺し屋、崖っぷちの新人社員、博多を愛する私立…

皇国の守護者(1)

「今宵の地獄はここまでとしよう」 あらすじ 氷雪舞う皇国北端の地に、鋼鉄の奔流が押し寄せた。 圧倒的軍事力を誇る帝国軍怒涛の進撃に、皇国軍は為す術もなく潰走する。殿軍を担う兵站将校・新城直衛中尉は、死力を尽くして猛攻に立ち向かうが―!?真の「救…

首折り男のための協奏曲

「まあ、戦争がどういうものなのか俺は知らないが」 「僕も戦争のことは知らないですけど、あれを観て、分かりました」 「何だ」 「『プライベート・ライアン』の冒頭、三十分」 「ああ」「あれは、大変そうだったな」 あらすじ 首折り男は首を折り、黒澤は…

電気サーカス

彼女が手首を切ったならば、僕は「アホだなぁ」と笑顔さえ浮かべっつその刃物を取り上げ、傷口を拭いてやり、すると、彼女も血液を流しながら、安心したような微笑みを返す。この一連の流れは伝統芸能のように決まり切った型であり、そしてまたごくありふれ…

たったひとつの、ねがい。

別に俺は見境のない人殺しなのではなく、必要だから殺しているだけなのだ。 あらすじ 彼女と知り合ったのは学生時代だった。互いに心を通わせてる、そのことすらも確認しなくても分かる日々。そして今日、俺は思い切って結婚を彼女に持ち出してみた。下手に…

演じられたタイムトラベル

メンバーは最後の時間で、人間関係を修復することを放棄した。日常で培った関係は崩壊したのだ。いや、元々この関係が真実だったのかもしれない。上っ面で張りぼての関係だった。そして、このような密室の中で真実が見えたにすぎない・・・・・・。 あらすじ…

僕のエア

もうここには誰もいなかった。残されているのは、俺の人生だけだった。逃げたくても逃げられない大迫力の人生苦悩が俺の眼前に広がっていた。確かにここはもう砂漠ではなかった。色鮮やかな地獄だった あらすじ 定職も生き甲斐も友人も恋人もなく、当然のこ…

世界は密室でできている。

僕はエノキを守る。この得体の知れない訳の判らん女の子を、僕はとりあえず今夜の間、守ることに決めたのだ。チンポの世話は、後で僕一人だけになったとき、ゆっくりしてやればいい。 あらすじ 『煙か土か食い物』の舞城が放つ鮮烈青春譚14歳の名探偵ルン…

熊の場所

愛情というのはどうしてこんなにも乱暴になれるのだろう?どうして物事をうまくいかせようとすることを、こんな風にむりやり阻んだりするのだろう? あらすじ あなたの「熊の場所」はどこですか? 舞城王太郎の魅力を余すところなく表現した傑作集! 僕がま…

時間のおとしもの

いつからか俺の生き方を決めるのは自分じゃなくて時間になっている。電車を利用するようになってから、俺も時間のレールに乗り上げているみたいだ。 あらすじ 『携帯電波』―少女が台所で偶然見つけた携帯電話。耳を傾けた向こう側には、もう一人の自分がいて…

アヒルと鴨のコインロッカー

「生きるのを楽しむコツは二つだけ」河崎が軽快に言った。「クラクションを鳴らさないことと、細かいことを気にしないこと」 あらすじ 【第25回吉川英治文学新人賞受賞】「一緒に本屋を襲わないか」大学入学のため引越してきた途端、悪魔めいた長身の美青年…

神様のカルテ(2)

「貴君の年齢で夢なんぞ見つからなくて当たり前だ。『やりたいことを見つけてそこに打ち込んでいくのが人生だ』などということ自体が、ただの幻想なのだから。世の中はそんなに都合よくできてはいない」 身も蓋もないことを言う。 「だいたい、そんなに目の…

神様のカルテ

笑う者あらば笑うがいい。不器用な我々は、こうやってわずかずつでも前進していくのである。 あらすじ 栗原一止は信州の小さな病院で働く、悲しむことが苦手な内科医である。ここでは常に医師が不足している。 専門ではない分野の診療をするのも日常茶飯事な…

彩乃ちゃんのお告げ

「悪いことするのってさ、楽しいよね」 「うん。楽しい」 「いいんだよ、これくらいの悪いことは。たまにはね。人間なんてずっと真っ直ぐに生きられないから」 あらすじ ほんの小さなきっかけで、幸せになれるんだ友人から頼まれて、小学生にして「教主さま…

九つの、物語

たまたま読んだ物語の中にわたしがいた。ああ小説とは、と思った。どこかの誰かが書いただけの話。まったくの作り物。それがなぜか、絶妙のタイミングで、わたしたちの心に飛び込んでくる。 あらすじ 大切な人を、自分の心を取り戻す再生の物語 大学生のゆき…

花物語

「―なあ、沼地。お前、『やらずに後悔するよりやって後悔するほうがいい』という言葉について、どう思う?」 「負け犬の遠吠えだ」 沼地は断言した。 「やらずに後悔するほうがいいに決まっている」 「そうだな。私もそう思う。やって後悔するほうがいいなん…

死なない生徒殺人事件―識別組子とさまよえる不死

「この学校に、永遠の命を持った生徒がいるそうなんですよ〜」 あらすじ 「永遠の命を持った生徒がいるらしいんですよ」生物教師・伊藤が着任した女子校「私立藤凰学院」にはそんな噂があった。話半分に聞いていた伊藤だったが、後日学校にて、ある女生徒か…

私と悪魔の100の問答

「君の言っていたことは、かなり正しい」 - 「だがそれが、君の限界だ。正しいだけでは足りないんだ。それが世界の本質だ」 あらすじ ライトノベル世代に投げかける人生の問答集奇妙な操り人形が、母親のミスの収拾を試みる女子高校生に「人生を問う」100…

青の炎

もう、たくさんだと思う。これ以上、嘘をつくのは。嘘を重ねるたびに、誰かを傷つけていくのは。 だが、最後に本当のことを言いたいと思ったときに、それが許されないというのは、何という皮肉だろうか。 あらすじ 櫛森秀一は、湘南の高校に通う十七歳。女手…

クリムゾンの迷宮

序盤では正しい分岐を選んだし、そのあとも、それほど誤った選択はしなかったはずだ。現実はゲームよりも厳しく、それでも、うまくいくとは限らないらしい。 あらすじ 藤木はこの世のものとは思えない異様な光景のなかで目覚めた。視界一面を覆う、深紅色の…

at Home

「何べんだって始めてやるよ。俺たちは家族だ。誰に向かっても、堂々とそう言ってやる。誰にも文句なんて言わせない」 あらすじ そこは人がほんとうに帰るべき場所なのだろうか?ふぞろいで歪つな4つの家族とそこに生きる人々。涙と冷酷と波乱を存分にたたえ…

生贄のジレンマ(下)

……ああ、戦争は麻薬のようだ。 身を削ろうとも続けるしかない。強者になるためではなく、弱者にならないために続行しなければならない。戦い続けるうちに利益が減り、自らを荒廃させるだけとなってもやめることはできないのだ。 あらすじ 他人を生贄にして自…