電気サーカス

彼女が手首を切ったならば、僕は「アホだなぁ」と笑顔さえ浮かべっつその刃物を取り上げ、傷口を拭いてやり、すると、彼女も血液を流しながら、安心したような微笑みを返す。この一連の流れは伝統芸能のように決まり切った型であり、そしてまたごくありふれた仲の良い挨拶となっている。おはようリストカット、おやすみリストカット

あらすじ

まだ高速デジタル回線も24時間接続も普及しておらず、皆が電話回線とテレホーダイを使ってインターネットに接続していた時代。
個人サイトで自己表現を試みる若者達がいた―。


感想
週刊アスキーで連載された「電気サーカス」をまとめた本。長編小説です。
唐辺葉介さんの得意とするドロドロとした青春と深くえぐられるような感情描写がにじみ出ている傑作です。
僕はコレ、現代版「人間失格」だと思います。


唐辺葉介さんの主人公はよく自分を客観的に分析します。
それはとても冷静で、正確な分析です。自分のダメなところを具体的に上げたりします。それは僕にも該当するものだったりします。
そんなえぐられるような感覚があるから、彼の小説は読んでて生々しくて、楽しいんでしょうね。


ちなみに単行本未収録の番外編がこちらで連載されている模様。
僕もまだ読んでませんが・・・。



読んだ後聞いた曲(なんとなく作品に合うと思った曲を紹介)