さよなら流星ガール

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「どうして生き物は死ぬと思います?」
よく見ると、茉莉の大きな瞳は赤く滲んでいた。だけど茉莉の言葉は、いつもと同じく馬鹿みたいに丁寧で、どこか偉そうな口調だった。僕は鼻水をすすり上げ、
「神様は寂しがり屋だから」
と答えた。笑みを浮かべた茉莉は「実に君らしい答えですね」と言った。その言葉は、茉莉が僕を褒めるときに使う最上級の言葉だった。
そして、
「君に一つ良い事を教えてあげます」

あらすじ

8年後にやってくるプシュケ流星群を、僕たちは再び観ることができるだろうか――。

北海道のある町で、同じ日同じ病院に生まれた僕と茉莉。家もお隣さん同士という、絵に描いたような幼馴染の僕たち。唯一の違いは"健康な体"で生まれてきたかどうかだった。
いくら星に願いを込めても、神様は茉莉の病弱な身体を治してくれる気がないらしい。けれど彼女はその小さな体じゃ足りないほどの好奇心に溢れていた――。
入院生活での熱心な読書が災いし、ちょっとどうかと思う理系女子に成長した茉莉は、いつも僕を振り回してばかり。ただ、僕には言えない大きな秘密を抱えているようで――。
これは、きらきらの恋をし、やがては消える少女と僕の、刹那に輝く星のような物語。


感想
一二三スイさんの新作、さよなら流星ガールの感想です。
同じ日に生まれ、家も隣な、主人公、悠の幼馴染の少女、茉莉。
彼女は、ある先天性の病を抱えており、入退院を繰り返していた。茉莉は幼い日々のほとんどを本を読みながらベッドで過ごしたためか、同年代の女の子よりも大人びていて、そして、宇宙や科学を愛している。
主人公の悠はそんな彼女の突飛な行動に振り回されっぱなし。
だけど彼女の病気は、完全に治るものなんかじゃなくて・・・。


こういった物語は傑作「半分の月がのぼる空」なんかがありますので、なかなか難しい題材だと思いますが、著者独特の文体がかなり読ませるもので結構入り込んで読めました。
特にキャラクターの掛け合いが素晴らしく、ヒロインの口癖がよい味を出していました。

「君に一つ良い事を教えてあげます」
いったいどこから影響を受けたのかは知らないけれど、茉莉がなにかしらのうんちくを語る時は決まってその言葉を口にした。そしてその『一つ良い事』が、僕にとって本当に良い事だった事はあまりない。

茉莉に振り回せれている主人公の様子が一発で想像できますね(笑)
後半、やはり茉莉は彼女自身の病気と向き合うことになります。もちろん主人公もです。
最後は感動、というよりは切なさを感じさせるモノでしたが詩的な文体と合わさって非常に作品の雰囲気に合った終わり方でした。

また著者の一二三スイさんは「旅に出よう、滅びゆく世界の果てまで。」著者の萬屋直人説があるみたいですね。

あの作品を読んだのは随分前なのでイマイチ思い出せませんが、確かに言われてみれば詩的な文体なんかは似てるかも。萬屋直人さんはあれ以降作品を出してませんし、気になりますね。



読んだ後聞いた曲(なんとなく作品に合うと思った曲を紹介)