ゼロから始める魔法の書



「そんな顔をするな。もしも君が人でないなら、我輩は世界が人でなしで溢れるようにと願う」
「魔女にそう願われたところでな・・・・・・」
まあ、悪い気はしない。だがそうとは口にしてやらない。

あらすじ

教会歴526年―。世界には魔女がいて『魔術』が存在していた。
そして、世界はまだ『魔法』を知らなかった。
そんな時代、人々に“獣堕ち”と蔑まれる半人半獣の傭兵がいた。
日々、人間になることを夢見る彼だったが、その数奇な運命を一人の魔女が一変させる。
「―戻りたいのか?人間に。ならば傭兵、我輩の護衛になってくれ」
ゼロと名乗る魔女は、使い方しだいでは世界を滅ぼしかねない魔法書“ゼロの書”を何者かに盗まれ、それを探す旅の途中だという。
傭兵は、人間の姿にしてもらうことを条件に、大ッ嫌いな魔女の護衛を引き受けるのだが、禁断の魔法書をめぐって人々の思惑が絡み合い…。第20回電撃小説大賞・大賞受賞作!


感想
一般的な家庭からもふとしたことから半分獣の姿の人間が生まれる世界。
主人公もそんな半人半獣の一人。
彼は、人に厭われ、獣にも嫌われ、魔女には触媒として命を狙われる日々。
そんな彼の生きる道は傭兵しかなく、戦場を転々としています。そんなある日、風変わりな魔女、ゼロと出会い・・・。
獣姿の主人公って昨今のラノベじゃ珍しいですね。
また、獣の主人公が強すぎるわけでもなく、我が身の不幸を程々に嘆きながら折り合いをつかせて生きてる感じがとても新鮮でした。


ですが、この作品でもっとも魅力的なのはその世界観でしょう。
序盤で、魔法の語源、獣堕ちの起源の説明がゼロの口からなされるんですが、それがとても上手い。
世界観の説明の旨さに一気に惹きこまれてしまいました。そのあたりはどこか「スレイヤーズ」みたいな古き良きライトノベルを感じさせるものがあったと思います。
ココ最近のファンタジーの中じゃかなり上手い「魔法」の作りじゃないでしょうか。
とてもワクワクしました。次回があるなら是非読みたいですし、大賞は余裕で納得です。伏線の回収もお見事。
ちなみにヒロインは我輩系女子です。


読んだ後聞いた曲(なんとなく作品に合うと思った曲を紹介)