零崎人識の人間関係 戯言遣いとの関係

「善だの悪だの、そんなもんがこの世にあるかよ――白黒つけよーったって、白も黒もねーんだ。すべてが灰色で――すべてが普通だよ」

あらすじ

零崎一賊」――それは“殺し名”の第三位に列せられる殺人鬼の一賊。
死んだ人間みたいな目をした少年と、顔面刺青の殺人鬼。二人の出会いが、そして語られることのなかった京都連続通り魔事件の真相がついに明かされる!
零崎人識の動機と、その無惨なる結末は……!?

感想
この『人間シリーズ』って何かに似てるって思ってたら『ビートのディシプリン』だって気づいた。死神ブギーポップ不在ならぬ、語り部戯言遣い不在。これってやっぱり影響されてるのかな?って思ったらwikiに書いてあるね。

西尾維新は本作ひいては上遠野浩平の作品が、執筆業を志した決定打であったと度々インタビューで答えている。上遠野本人との対談の際には、自身のデビュー作である『戯言シリーズ』が本シリーズのオマージュ、『人間シリーズ』が『ビートのディシプリンシリーズ』のオマージュである事を明かしていた。

まさしく感じたとおり。
そんなわけで人間シリーズ最終巻、零崎人識の人間関係4冊目『戯言遣いとの関係』。『クビシメロマンチスト』の裏側、京都連続殺人事件の真相が明らかになっています。西尾氏自身が

零崎一賊という集団がシリーズを書き続けているうちに、ちょっと『理想化』が進んでしまったというか、僕の中で格好いい奴らになりすぎてしまったんです。
そうじゃないんだ、ということに回帰する小説を書こうと思いました。特に人識に関してはその理想化傾向が強くなってしまって、これではいけないと。
なので、今までの小説で『すごく』なりすぎていた人識の『格好よさ』を潰さなきゃと思ったんです。
こんなすごい奴なわけはないし、こんなに格好いい奴がいるわけがない。決して無敵ではない、苦しみながら戦う部分もあるんだ。
『すごい』の裏には必ず『すごくない』部分があるんだ、そういうことを書きたかったんです。だから随所に人識の生の感情も出ている。

とインタビューで語っていたとおり、この『戯言遣いとの関係』の人識は今までで一番かっこ悪いんじゃないでしょうか。自分探しで迷走する人識。『人間試験』後のおそらく最も格好悪い時期の人識を書いた作品ですね。まさに西尾氏のねらい通りなんでしょうか。連続殺人事件の動機なんかはかなり意外に思いました。
これにて人間シリーズも終了。シリーズ全体的には意外なキャラクターの意外な真相とかが知れて面白かったです。七々見とかは予想外すぎましたがw一応私的推奨順は【出雲】→【双識】→【伊織】→【戯言】。伊織が一番面白かったです。
次回の戯言につながる新作は『緋色の英雄』で主人公は哀川潤とゆー噂ですので楽しみですね。