絶望同盟

考えないといけないことは、それはもうたくさん、たくさんある。時間がいくらあっても足りないくらいだ。

あらすじ

ロリコンである自分に絶望している。―当真ネンジ。
女としての自分に絶望している。―蓮井カオル。
世界すべてに絶望している。―木羽ミキオ。
なんとなく絶望している。―雫石サナ。
第九高校で絶望する、はみ出し者4人の青春ストーリー。

感想
第九シリーズと呼ばれるシリーズの3作目にあたる作品らしいですが、ほとんど作品間に繋がりはないらしいです。自分も読んだのは、この『絶望同盟』が初めて。ネットでも評判が高いらしく、現在amazonじゃ売り切れてますね。連作短編です。
不思議なコミュニティの話です。なんだか乙一さんの天帝妖狐に収録されている『A MASUKED BALL』に近い印象を受けました。あのトイレが靴脱ぎに変わったような、そんな感じの薄い繋がり。
1.ぼくらは欲望に絶望する。
性癖に絶望するロリコン、当真ネンジの話。キャラ付けとしてのロリコンではなく、本当に幼い子供が好きで、彼はそれを真摯に悩んでいます。性愛を抱かないように悶々と自己嫌悪を重ねる様子はまさに思春期といった感じです。愛について真剣に悩み、結局自分は紙人形を自分勝手に愛しているだけではないかと悩む彼の心情は痛いほどに伝わりました。
2.ぼくらはSEXに絶望する。
性別に絶望するレズビアン、蓮井カオルの話。彼女は自分の顔が醜悪なのではないかと悩み続け、痩せていることこそ美しいと感じ、食事を受けつけなくなっています。冷静にな思考力を持っていながらも、他人と話をすることに慣れていない。そんな様子に共感する部分がありました。
3.ぼくらは全てに絶望する。
世界に絶望する、木羽ミキオの話。彼は常に効率のみを優先しており、周りを見下しています。前2編では彼にはあまりいい印象を抱いていなかったんですが、この話でガラリと変わりました。結局見方によって印象なんて簡単に変わってしまうんだなあ。と思ったり。
4.ぼくらは何となく絶望する。
なんとなく絶望している、雫石サナの話。常に実感がなく、なんとなく生きている彼女ですが、ある考えを得て、気持ちが段々と変わっていきます。その辺りは佐藤友哉さんの『灰色のダイエットコカコーラ』のハサミちゃんを感じさせました。自分はこういう話がとても好きです。だから、この話もとっても好きです。性行為描写があるのですが、お色気ではなく、一般文芸のように淡々と書かれていたのが印象に残りました。
5.それを希望とは呼ぶまい。
結局は誰かが動いたことで、この結果が生まれたんだろうなあって思いました。最後の一押しをしたのは彼だけど、彼を動かした彼女がいて、彼女を動かした彼女がいて…というなんかそんな感じです。
自分はこういう話大好きだなあ、と再確認。青春上等。こういった不思議コミュニティ作品他にないかしら。