レジンキャストミルク(7)


何もかもが言葉にならない。
言いたいことがあり過ぎた。
言い残しておきたいことが、山ほどあった。
―ああ、そっか。
言いたいことが山ほどあるってのは、そういうことか。


ようやく気づいた。
何だ、私。
この世界、好きだったんだ。

あらすじ

全ての【虚軸(キャスト)】を消滅させて世界の統合を図ろうとする城島樹。その計画の核となった城島鏡と無限回廊。家族が偽物だったのか、それとも偽物は晶自身なのか。心が揺らぐ中、それでも彼らの企みを阻止するため、連れ去られた芹菜を奪還するため、晶と硝子は反撃を開始する。しかし、晶の存在を憎悪する無限回廊もまた、既に次の一手を打っていた。無限回廊の許へと攻め込む晶と硝子。ふたりの留守をつき学校を襲う、新たな敵。それを迎え撃つ蜜や殊子たち―。思惑と策略が交差する戦い、その先に待ち受けるものは…!?完結へ向け、いよいよクライマックス。

感想
死闘、の2文字が似合う一冊。血みどろの泥臭い殺し合いが凝縮されてます。

偽物(フェイク)? 虚構(フィクション)? 紛い物(イミテーション)? どうだっていい」
母さんに、無限回廊に。
「僕は確かにあんたたちにとって、代用品で失敗作かもしれない。くだらない、ただのパッチワークでしかない、箱庭に捨てた模型のようなものかもしれない。……でもな」
それから、ここにはいない、父さんに。
「粗悪な代用品を舐めるな。出来損ないの失敗作を侮るな。繋ぎ合わせの畸形を嘲るな」
歪に組み合わせ、偽物だけを組み上げたこの武器は、あんたたちを殺すためのものだ。
まるで病が世界を覆うように、奇病が人を滅ぼすように。
「箱庭の出来損ないが、歪で醜い樹脂象り(レジンキャストミルク)の僕らが……現実の本物を駆逐してやるよ!」

「直川たちが選んだのは、直川たちを選んだのはあんたじゃない。この娘よ。 偽物? 上等ね。安物の紛い物? いいじゃない高価じゃなくて。コピー? だったら本物との差なんてない。模型? 模型の方が一緒に気安く遊べるわ」
まるで嘲るように。そして同時に、自らに言い聞かせているかのように。
「私たちはことごとく偽物の世界で、だからこそ本物に取って代わる図々しさを持ってるの。だからね、鴛野在亜。その贋作に負けた程度のくだらない真作なんて、どっかの博物館の倉庫で大事に埃でもかぶってればいいのよ」

などの啖呵があり、本物 vs 偽物 の対決の構図がすごく出てました。こういった対比は熱いです。教室内の壮絶な死闘には燃え上がりました。たぶんシリーズ屈指の名シーンじゃないでしょうか。
そして、今巻では悲劇も描かれています。最後に彼女が自分の心情を語るシーンは胸に突き刺さるようでした。
彼女が倒れても前に進みもうとするキャラクター達にも涙。
また、あとがきでの作者様のスタンスがすごく真剣で、本気で自分のキャラクターに愛をもって書いてるんだなあ、と感じました。
巻末のイラストにも燃え上がりつつ、次回、最終巻です。