マージナル・オペレーション[F]



「なぜそんな顔を?」
父は優しく言った。
「毎日ではないけれど、たまに人を殺しています」
僕がそう答えると、父は表情を変えずに言った。
「それは僕の命令だ」
僕は父の顔をもう一度見た。父は、こういうときだけは間髪いれず、そして表情も変えなかった。
「それは僕の命令だ。だから君が気に病むことはない」
父のいいところは、そこを断じて言えることだと思う。
イヌワシが肩に掴まった気がした。
それから、僕は殺すことに悩むのをやめた。父が全部の罪をかぶって地獄に颯爽と降りていくように見えたので、一緒に地獄に降りようと思ったのだった。

あらすじ

ソフィアのために、タイに渡った梶田。彼は、ソフィアのために何か為すことはできたのか…。うまくいかない人生の一コマを切り取ったハードボイルド「マフィアの日」。“最初の二四人”の一人であるハサン。父・アラタとの出会いや、彼の目から見た父の姿が語られる独白録「父について」。ライトノベル作家と編集者が、総武線の車内で見かけた赤毛の少女。彼女に話しかけたことから、事態は思わぬ展開に…。『マージナル・オペレーション』誕生秘話「赤毛の君」。アメリカ人記者、イーヴァ・クロダ。“子供使い”新田良太にはじめて接触した西側ジャーナリストによる、貴重な取材記録「ミャンマー取材私記」。そして、安定したミャンマー戦線を離れ、バングラデシュに向かったアラタとジブリールの束の間の休息を描いた「チッタゴンにて」。あの大ヒットシリーズの未収録エピソードや、その後の物語を収めた待望の短編集が登場!


感想
全5巻で完結したマージナル・オペレーションの短篇集、マージナル・オペレーション[F] フラグメンツの感想です。
あの頃の彼らや、その後の彼らについてが語られています。

短篇集なので、一応ひとつずつ感想を。



■マフィアの日
ソフィを病院で護衛する梶田の視点でアラタやジブリール、そしてソフィをみる短篇集。
主人公の梶田のモデルはマフィア梶田氏。作中でもマフィア、マフィアと呼ばれています。
ちなみに本作はWeb上で公開されたもののため、こんなPVもあります。

本人もTwitter上でコメントしてます(笑)


■父について
はじめの24人の一人、ハサンを主人公として、アラタを語る一編。
今回の短編で一番好みでした。ハサンが将来どんな形に収まるか・・・気になりますねー。
さらっとジブリールの実年齢が書かれてますけど、これってもう前に公開されてましたっけ?
若っっ!って思っちゃいましたよ!


赤毛の君
アラタ達が日本にいた時のジニの小話。伊藤さんの意外な一面が見れます。
マージナル・オペレーション担当編集の平林緑萌氏やラノベ作家の土屋つかさ氏が友情出演し、ジニに振り回されます。

平林氏のTwitterではさらっとマージナル・オペレーションの短編続刊について語られてます。続き出るとか嬉しい!

なんか妙に作中の思考に共感できる土屋つかさ先生ははるカナには出ないらしい


ミャンマー取材手記
合衆国記者、イーヴァ・クロダによるアラタへの取材を書いた短編。
作中主人公のイーヴァ・クロダは著者の別作品「ガン・ブラッド・デイズ」からの友情出演とのこと。女性視点から見たアラタのかっこよさは異常。


チッタゴンにて
ジブリールとアラタの例のイチャラブ。
ちくしょうと思いながらニヤニヤ。表紙のジブリールはそういうことかと。



以上、満足度の高い短篇集でした。
やっぱ芝村裕吏先生の淡々とした文章好きです。

作中で新的将軍って名前がでてましたけど、そんな人物いましたっけ?
そこがちょっとわかりませんでした。


あとがきからも作者の意欲が感じられますし、続編、そしてアニメ化も期待してますよ!!頼む!


読んだ後聞いた曲(なんとなく作品に合うと思った曲を紹介)