終わる世界のアルバム




「ほんとのことがわかんないなら、都合がいい方に考えればいいじゃない。雨の日か傘屋を、晴れの日は草鞋屋を応援すればいいの」

あらすじ

なんの前触れもなく人間が消滅し、その痕跡も、周囲の人々の記憶からも消え去ってしまう現象が頻発している世界。そこでは、いつの間にかクラスメイトが減っていき、葬式や遺書は存在せず、ビートルズが二人しかいないのが当たり前だった。そんな世界でぼくは例外的に消えた人間の記憶を保持することができた。そしてぼくは気がつく。人が消えていくばかりの世界の中、いなかったはずの女の子がいつのまにかクラスの一員として溶け込んでいることに―。

感想
杉井光ってほんとすごい。何者なのこの人。『さよならピアノソナタ』をさらにさらに研ぎ澄ませたかのような抜群に透明感のある文章。杉井光の描く音楽と愛はもう本当に心に響く。
なんでこんなに美しい世界が描けるのか不思議でならない。主人公やヒロインたちの息遣いや、感情がダイレクトに伝わってくる素晴らしい作品でした。