アカイロ/ロマンス―少女の鞘、少女の刃




「……そんなに大事なんだ、灰原さんが。でもね、枯葉ちゃん。その娘はあなたが思ってるほど、立派な娘じゃないよ。私たちにいじめられて泣き喚いてた、弱虫なんだから」
挑発を込めた嘲りに対し、しかし―枯葉は応える。
「お前は何を言っているのだ?」
呆れというよりも、本当にわからない、といった調子の表情で。
「妾は人の世に詳しいとは言えぬが、いじめくらいは知っている。いじめというのは……強いものが弱いものに対して陰湿な暴力を振るうことだろう?」
「そうだよ、だから……」
言いかけた歩摘を遮り、
「だったら、弱い者が強いものに対して振るう陰湿な暴力は、いじめなどではない」

あらすじ

人間ではない『一族』がいた。ある山の奥深く、人の手の届かない場所で里を作り、ひっそりと暮らす―女しか生まれず、それ故に滅びかけていた『あやかし』。今までも、これからも、彼女たちは人の世から隠れ、人の世の狭間に生きていく、そのはずだった。しかし、その日。『一族』が起こしたある諍いは、小さな波紋となって町へと広がっていく。その結果として霧沢景介と灰原吉乃の前に現れたのは、枯葉と名乗る少女だった。彼女がふたりにもたらしたのは、運命か、或いは―。藤原祐×椋本夏夜のコンビが送る現代伝奇ファンタジー、ここに開幕。

感想
藤原祐さんの作品。『煉獄姫』が面白かったので読みました。どっちかって言うと、『レジンキャストミルク』に近いかな。
周りを冷静に見つつも決して驕ったりしてない主人公が好感触。こういう伝奇作品の主人公って周りを見下しがちだからねー。
レジンキャストミルク』や『煉獄姫』と違い主人公が一般人なので、彼と同じ目線で物語を楽しめるのもいい感じ。主人公が超越者な著者の他作と比べると、感情移入し易い点も良い。
ただそれだけにバトルは今までと比べるとちょっと地味なのが残念。これからに期待です。