“菜々子さん”の戯曲 Nの悲劇と縛られた僕




人間は他人を理解することなどできない。想像するだけである。

あらすじ

“菜々子さん”が突然、3年前の事故は「事件だった」と語り出した。
それは病床の僕にとってもはや検証不能な推理だけど、自然と思考は3年前に飛んでいた。
そういえば、あの頃のキミって、意外と陰険だったよね―。
“菜々子さん”が語る情報の断片は、なぜか次第に彼女が真犯人だと示し始める。“菜々子さん”が暴こうとしている真相とは一体!?
可憐な笑顔の下に、小悪魔的な独善性が煌めく、まったく新しいタイプのヒロイン誕生。

感想
角川学園小説優秀賞受賞作。それだけに、非常に完成度が高いです。続編が出しづらいほどに…。
本名を呼ばれると発作を起こすヒロイン、という奇抜な設定から序盤は彼女をヒロインとした学園モノかな?とおもっていました。が、蓋を開けると待っていたのは良質なミステリー。過去の事故が原因で身動きどころかまばたきすらできない全身麻痺の少年が主人公。彼はヒロインの独白をききながら、過去の事故の原因を探っていきます。この辺の心の動きが秀逸。
事故当時の記憶や、見舞いに来た人たちの証言から、事故を引き起こした犯人を推理します。
しかし、主人公は話すどころか動くことすら出来ません。どれだけ推理しても披露できないのです。究極の安楽椅子探偵ですね。あっと驚く真相も用意されており、非常に満足度の高い一冊でした。