ぷりるん。―特殊相対性幸福論序説




「たいていさ。バカなやつって、なーんにもわかってないのに、わかってるふりをしたり、わかってるつもりになってる。世の中にはそういうバカが多い。じつに多い。あたし、バカが嫌いだからさ。人間にはね。限界があるでしょ。何でもかんでも知ってるやつはいない。森羅万象を知りつくしてるやつなんているはずがない。賢い人間は、自分は何でも知ってて、何を知らないか、ちゃんとわかってる。区別して、整理できる。バカはね。迷惑だし、損をするんだよ。騙されやすいし、利用されやすいからね。あんた、バカになりたいの?なりたくないなら、わからないことを、わかってるように言うのはやめなさい。まだ間に合うから」

あらすじ

ラブラブ光線絶賛放射中な妹――うずみ(♀)
元・天才美少女、自由奔放な姉――綾(♀)
みんなのアイドル、気になるクラスメイト――桃川みう(♀)
おみ足がステキな憧れの先輩――小野塚那智(♀)
彼女たちに振り回される人――ユラキ(♂)
ユラキの悩みは今日もつきることなく、“ぷりるん”はまた現れる。十文字青流、新感覚系ラブストーリー誕生!

感想
異色の青春ストーリー『第九シリーズ』第1巻。『絶望同盟』→『ヴァンパイアノイズム』→『ぷりるん。』と逆走する形になってしまいました。ラノベでこれをやっちゃうのはすごいなあと純粋に思えるような鬱々とした、それでいて爽快な話です。どこか佐藤友哉さんや瀬戸口廉也さんを彷彿させますね。
妙なくらいに主人公に感情移入してしてしまいました。

しかしながら、ぼくは桃川に電話することも、メールを送信することもしなかった。できなかった。
とくに用事がなかったからだ。用事もないのに、電話をしたり、メールを送ったりすることが、ぼくにはどうしてもできない。用事などなさそうなのにかかってきた電話にはちゃんと出るし、話にはつきあう。メールがくれば、レスはする。電話がかかってきたので、出なければ。メールがきたので、返事を書かなければ。それはぼくにとって用事に値するからだ。

こういう文章とかね。わかるなあ、と感じてしまうのは自分が青臭いからでしょうねえ・・・。
桃川との最後のシーンやノボルとのカラオケボックスでの対話シーンは特にお気に入り。ノボルの本心なんかはウルッと来ました。
ただ残念なのがぷりるんの扱い。あそこだけ普通のギャルゲ的な気がしました。主人公の感情描写なんかは素晴らしかったですが。
『絶望同盟』とはまた違ったベクトルの作品でした。
最後バットエンドともとれる感じが怖いですね。